梅田スカイビルの中にあるシネ・リーブル梅田という
映画館を出た先の椅子に腰掛けてメモしている。
見上げると、遥か遠くに空中庭園が見える。
大阪駅周辺から見えるこのビルを見るたびに、
この映画を思い出しては、胸をチクリとさせることだろう。

【半分の月がのぼる空】
#原作:橋本紡/脚本:西田征史/監督:深川栄洋
裕一(池松壮亮)はまっすぐに里香(忽那汐里)を見つめていた。
自分に今できる精一杯のことを。
スポットライトを浴びた彼女に向かって。
暗闇から彼女に語りかける。
周囲の目も気にせず。ただ、まっすぐに。
そうした中で、出てきた言葉だった。
“一瞬でも長く…”
彼女は待っていた。
その言葉を、彼のクチから聞きたかった。
彼女は応える。美しいシーンだった。
舞台はフィナーレ。
彼女の前に王子は現れた。
王子の想いが仲間に伝わり結晶となった瞬間だった。
せまる王子に彼女はこたえた。
素晴らしいエンディングだった。
学生の頃、物語を考えていた人なら
一度は考える話だと思う。
あれこれ夢みて、せつなくなったりしたあの頃。
ただ、文字や映像にしようとすると頭の中で壮大に
なり過ぎて、なかなか表現できない自分もいた。
あれから何年も時は経ち、どんな話だったかも
忘れてしまった今。あの頃、思い描いていた世界を
映像として観せてくれた。そんな感覚に包まれている。
感謝の拍手を送りたい。
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